貸本屋について

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1 私の子供時代

私の田舎に本来の店頭貸し型の貸本屋はなかったが、月刊雑誌専門の宅配巡回型の貸本屋があり、
たとえば子供は「少年」、「冒険王」、「まんが王」、親は「オール読み物」、「主婦の友」という風に申し込むと、
それぞれ契約先の順番が決まっていて、配達・回収されるというもので、3泊くらいの貸出期間であったろうか。
人気のある契約先の多い雑誌は当然複数仕入れていたと思われます。

この頃、親に漫画雑誌を買ってもらう、又は小遣いで買うというのは冬休みくらいだったと思います。
当時、漫画雑誌は付録が全盛期の時代で、遊びの付録で欲しいのがあると、
その貸本屋(普通の家庭の玄関)で小銭を握りしめながら、付録を選んだという記憶があります。

週刊誌の「少年サンデー」、「少年マカジン」が創刊されるまでは、当然月刊誌しかないわけですから、
翌月号が発売されるまでに今月号が読めれば充分だという時代だったと思います。

この宅配巡回型の貸本屋をいつ頃まで利用していたか、定かではありませんが、親子とも週刊誌が当り前になるとともに
(恐らく宅配巡回型では週刊誌のサイクルには合わず週刊誌は扱っていなかったと思う)、
また月極めで小遣いももらえるようにもなり、段々利用しなくなったのだと思います。

2 私の学生時代(札幌市)

最初の下宿の割と近くに「沖本貸本店」(現在もあるらしいが今ではプレミアムのついた貴重な本が多いので、
借りるには高額の保証金が必要と聞いています。)があり、仕送りではマンガなんか買う余裕はないので、
たまにここを利用してました。
また、引っ越した地下鉄北24条駅近辺にも貸本屋がありました。

当時、市内には中央図書館しかなかった(現在はいくつもの図書館と区民センターの図書室がある)ので、
大学の図書館にないような軽い小説はやはり貸本でした。
ここを引っ越して近所にはなくなったので貸本から離れました。

私は学生時代から古本屋巡りが趣味となりましたが、当時の私の行動半径の中には古本屋は数えるほどしかなく、
今のようにちょっと歩くとここにも古本屋がという時代ではなくて、
私にとっては一般書ならともかくマンガの本というのは結構高価なものという感覚でした。
考えるに、本の流通量そのものがまだ少なかったということもあるのでは。
(その後札幌で古本屋が激増したのには、本の流通絶対量が増えたということと、
札幌が発祥の地と言われる二分の一方式の普及が大きいと思います。)

よって学生時代に買ったマンガの本というのは微々たるもので、
白土「カムイ伝」、「人間昆虫記」などの手塚作品、楳図「イアラ」そして永島慎二作品くらいのものか

図書館が身近にない、近く古本屋もない、ついでにお金もあまりないという時代には、
マンガ以外も含めた貸本に対する需要は結構あって貸本屋もそこそこあったんだと思います。

3 昭和63年の札幌の貸本屋状況

同業者に借りた「北のアンティクアリアン 札幌古書店の足跡」(北の文庫発行)に
昭和63年9月30日現在の古本屋と貸本屋の状況が記載されています。
(この本は札幌の古本屋の歴史をまとめたもので、この分野では私が読んだ唯一のものですが、
取りまとめて残してくれた関係者に感謝、ひょっとしたら、古書籍組合でまとめた別の資料があるかも)

この本を読んだときの貸本屋関係のメモを整理すると、

区分 貸本専門 貸本古本兼
中央区
西 区
東 区
北 区
白石区
豊平区 -
合 計 14
注.区名は当時のまま

昭和63年当時、札幌には貸本専業と古本兼業とで14軒あったということですが、
現在と比べると、いくつかが新規参入し廃業もあり、古本専業に移行したものもいます。

4 開店当時の夢の屋

夢の屋も開店した頃はマンガの蔵書が少なかったこともあり、
店主の趣味分野であるSF、推理の小説、各種アンソロジー、落語など笑芸関係、映画関係などを並べており、
マンガ以外が全体の三分の一を占めていましたが、店主の趣味分野が一般的でなかったことと
既に整備されていた無料の図書館と競争できるはずもなく、マンガの蔵書が増えたこともあってマンガ専門店になりました。

5 現在の札幌の貸本屋状況

インターネットタウンページで「札幌、貸本」を検索すると、9軒が表示されます。
札幌以外では道内には旭川に1軒のみ、先日まで函館にも1軒あったのだが・・・・

6 最後に

貸本屋が全盛だったという昭和30年代その後テレビという娯楽が登場し、
収入も増えて本も買って読めるようになり、テレビゲームが登場したと思ったら、家庭にまで侵入し、
今や金喰い虫の携帯電話が当たり前のアイテムとなり、更にマンガ喫茶が陸続と開店し、
世の中には不景気風が吹き荒れている。

貸本屋の減少傾向は全国的なものなんだろうけど・・・・・
夢の屋もいったい何時まで持つものやら

7  追記

 (1)インターネット通販で長年のコレクションを手放すことになった。
抜本的な解決策ではなく、単なる延命措置にしかならないが・・・・

 (2)同業者が、貸本屋を廃業し、’99年秋移転してマンガ喫茶を開業した。
商売が思わしくないためレンタルも再スタートしたが、’00年になっても盛り返せず5月下旬で閉店した。

 ’00年7月現在、インターネットタウンページで「札幌、貸本」を検索すると、7軒に減っています。

 (3)’00年10月下旬100メートル南に大型古書店が開店した。例によって立ち読み歓迎という方針のチェーン店だ。
これによって学生の新規入会はますます減りそうである。

 (4)('01年1/13)「かわせみ堂ホームページ」に全国のマンガ喫茶情報があり、
そこによると札幌市内には27軒もマンガ喫茶がある。そのうち8軒が我が北区にあり、一番の激戦区だ。
その上、最近近所にまた一軒が開店した。

 (5)('01年3/31)新規会員数の激減状況
あらためて記すまでもなく、貸本屋としては末期状況にある。夏頃までに結論を出さねば。
若い人に支持を受けなくなった商売だということは、歴然なのだから。
91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年
345人 368 387 326 361 322 393 276 197 149

 (6)('01年10/25)札幌市内の貸本屋の廃業
南郷10丁目の貸本屋は廃業したとのことだ。(それらしい噂は聞いていたが)。
JR白石駅前の貸本屋も本を一括買い上げてくれる人を探していたから、これで2軒の貸本屋が消えた(る)ことになる。

 (7)('02年6/28)全国の貸本屋事情
福岡の貸本屋「レンタルブック空港東」さんの掲示板書き込みより
「インターネットタウンページでの検索で全国の貸本屋さんのリストを作ったんですが、2年前に調べた時より数が減ってました。2年前に調べた時には全国に297件あったんですが今回調べた所238件になってました。」
(店主)2年間で2割減少しているというのは想像以上でした。

8  夢の屋ついに廃業('03年1/27記)
2002年10月20日の最終貸出をもって、貸本・夢の屋は廃業となりました。
時代の流れというか、才覚が無かったというべきか、古本通販を始めた頃に予想した通りの結末です。

9 その後の札幌の貸本事情(2004.8/12記)
(1) 8/7(土曜)飲み屋で、久々にスポーツ新聞を読んでいたら、札幌の貸本屋の広告が載っていた。
新しいマンガ喫茶の広告は時たま見かけていたが、
札幌に3店のチェーンを持つ、割と大きそうな感じの貸本屋が開店していたことは、まったく知らなかった。
ビデオ・レンタル店などがコミック・レンタルを開始するのは、たまに見かけていたし、
かつての店の近くの中古がメインのCD・DVD屋が割と最近、マンガのレンタルを開始していたということもあった。
しかし貸本をメインとした店が札幌で新規に開店していたとは…。新規開店というのはかなり久しぶりのことではないだろうか。
新古書店で立ち読みが多いのは、大学生、中・高校生、若いサラリーマンであるから、
店舗の所在地によっては、親子連れやちょっと年配をターゲットにすると、
まだまだ貸本屋が生きる余地はあるのかも知れない。
そう考える経営者がいたからこそ、新規参入したのだろうけど。
貸本屋が生き残れるかどうかは、近く導入される例の著作権がらみの負担がどの程度になるのかに寄るんだろうな。
新制度の動きについては、最近さすがに関心が無くなってしまったので、どうなっているのかとんと判らない。

(2) インターネットタウンページで「札幌、貸本」を検索したら、5軒だった。
上記の新規の店はまだ登録されていない。
また、以前に売り先を探しているらしいと記したJR白石駅前の貸本屋がまだ健在だった。
継続で営業中なのか、居抜で引き継いだ人がいたのかは不明。


10 札幌の貸本屋はゼロなの!?(2014.9/25記)
一昨日、NTT電話帳が届いた。まず最初に確認したのは古本屋…そして貸本屋


<江戸時代の貸本屋の研究>に興味のある方は、千葉大学文学部高木元さんによる次のホームページで 貸本屋・書肆

<貸本屋についての本>
昭和30年代の貸本屋全盛時代に興味のある方には次の本をお薦めします。
長谷川裕「貸本屋のぼくはマンガに夢中だった」草思社(1999年4月)本体1600円

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