道新マンガコラム 「さんだらぼっち」石ノ森章太郎作

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(2003年2月7日付け道新夕刊) 漫壇 再版待ってます 第4回目(今回が最後のコラムとなりました)
「さんだらぼっち」石ノ森章太郎作  江戸情緒がたっぷり
 一九九八年死去した石ノ森章太郎の江戸市井ものには名作「佐武と市捕物控」があ るが、時代ものと言えば、武士か忍者の物語しか知らな かった筆者にとって、とても新鮮に感じられた記憶があ る。市井ものの第二弾ともいうべき「さんだらぼっち」 は、一九七五年に「ビッグコミック」で連載が始まっ た。江戸情緒が一層たっぷりと盛られ、筆者は、この作 品で石ノ森の江戸市井ものにすっかりハマッタのだっ た。
 江戸の遊里・吉原の大門前、凧(たこ)やコマなどを 商うおもちゃ屋の店先で、ふだん竹とんぼを作っている のが主人公とんぼ≠セ。店の本業は吉原での借金を取 り立てる始末屋。店にはさまざまな始末事が持ち込ま れ、手先が器用なとんぼにはカラクリ作りの仕事も入っ てくる。一見頼りなげなとんぼが、やっかいごとや大小 の事件を解決していく、一話ごと完結の物語だ。
 遊女とひやかし客との交情を描く「格子なじみ」は筆 者が気に入っている一編。ひやかしの政≠ニ遊女たちが嫌う 大工が、吉原に顔を見せなくなる。政は仕事場の事故で 右足を失って酒浸り。それを聞いた遊女たちは、見舞金 を届けるよう始末屋に依頼する。政の姿が消えて遊女たちも 寂しくなったのだ。とんぼは、政のため義足を作って 届け、促された政は、義足を付けて早 速吉原へ。軽口をたたき合う遊女たちと政の目に、うっ すら涙が光る。
 大事件は起きない。本作で描かれるのは、こうした江 戸庶民の物語だ。やっかいごと解決の過程で、浮かび上 がる人情の機微が読む者をほろりとさせる。遊里が主舞 台だけにつやっぽい場面も多く、さらには、店主の娘で 出戻りの志摩ととんぼの恋の行方も絡み、物語に奥行き を与えている。落語やカラクリ細工に興味がある人にも 薦めたい名作である。
 本作の単行本は、連載時に次々と刊行された全十七巻 (小学館刊)と、それを精選した同社文庫版全六巻(八 三─八四年)のみ。その後再版さ れてはいない。今年は江戸開府四百年。さまざまな催し が予定されるが、江戸ブームに乗って本作が再版されは しないだろうか。
             (ネット専門古書店「夢の屋」店主)

(コラムには字数制限があるので、もうちょっと)
 私の高校時代(1968年)に創刊された青年雑誌「ビッグコミック」(小学館、そのころはまだ月刊で背が角型の製本でした)で連載されていたのが、「佐武と市捕物控」だった。当時の週刊少年雑誌に物足りなさを感じていた私は、「ヤングコミック」や「漫画アクション」(「ルパン三世」が連載)なども時々購入していたが、掲載作品のレベルは今よりも高かったのではないかと思う。
 「武士か忍者の物語しか知らなかった筆者にとって、とても新鮮に感じられた」と記したが、この時はまだ「カムイ伝」には出会っていない。はたして田舎の本屋に雑誌「ガロ」や「COM」が並んでいたのかさえ記憶に無い。
 作者によると「廓のツケ馬というモチーフのせいで、テレビドラマ化がオジャンになった」とのことだけど、遅い時間帯で是非ドラマ化を実現して欲しいものだ。
 落語や江戸の生活についての本をかなり読み、現在も購入しているが、その起因は「さんだらぼっち」にあるのではないかと思う。
 なお、作者は改名しているので、ネット古本屋でこの本を探すときには、「石森章太郎」をキーワードにしてください。 

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