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（2002年12月6日付け道新夕刊） 漫壇 再版待ってます 第3回目
| 「ポケットの中の季節」ほか 樹村みのり作 今も新鮮 社会派の切り口 |
| 樹村みのりの作品との出合いは偶然だった。女子中学
生の家庭教師をしていた学生時代のある日、中学生から
少女マンガ雑誌をもらった。それに載っていたのが、
「翼のない鳥」の前編だ。一読し、〝空を飛びたい〟と
いう寓意（ぐうい）に満ちた少年の夢を描いた作品世界
に魅せられていた。あれは一九七五年のこと。筆者に
とって、少女マンガへの開眼となる出来事だった。 樹村の最初の短編集「ポケットの中の季節」（小学館 刊）の第一巻がやっと発売されたのは、その年の暮れ だ。そして七七年、同書の第二巻と、「翼のない鳥」と 初期短編を収録した「雨」（朝日ソノラマ刊）が、続い て七九年にはデビュー当時の初期作品を集めた「ピク ニック」（同）が発売された。 これらの初期作品集では、感受性豊かな少年少女の視点 で、いじめ、人種差別、孤独、貧しさ、身近な人の死、 大人の価値観に対する反発などが描かれる。どの作品に も作者の感性がきらめき、他の女性マンガ家とはちょっ と違う、感傷的ではない社会派的な切り口がとても新鮮 に感じられた。筆者は今も魅了されてやまない。 たとえば、「雨」所収の短編「風船」。これはほとん どセリフがない作品だ。道端の風船売りをちょっと離れ たところから見つめている身なりの貧しい少女。親子連 れなどが次々と風船を買っていく姿や子供たちの笑顔 を、少女はじっと見つめる。少女は心の中でたくさんの 風船に囲まれているのだが、ひとつだけ売れ残ったとこ ろで風船売りは店じまいを始める。少女は「それ…あた しの風船」と言って笑顔で近づく。が、何か怒鳴ったか のような風船売りの顔のアップ。すすり泣きたたずむ少 女…。 現在入手可能なものとして、九八～九九年にヘルス ワーク協会から刊行された「樹村みのり作品集」全四巻 （少女編、女性編、子供編、菜の花畑編）がある。しか し、これらに収録されていない名作、問題作も多い。ぜ ひとも初期作品を収めた四冊の再版を望みたい。さらに 欲を言えば、単行本未収録ものの作品集も待望される。 （ネット古書店「夢の屋」店主） |
| （コラムには字数制限があるので、もうちょっと） 「翼のない鳥」前編のストーリーは衝撃的だった。当時の私の不安定な精神状況にマッチしていたからだと思う。次の家庭教師の時間に、後編の載る翌月号も是非欲しいと頼んだことは言うまでもない(学生時代、マンガ雑誌を購入するゼニは無かったので)。本作が収録された単行本「雨」が発売されたのは、その二年後だったので、切り抜きでは最も繰り返し読んだ作品だと思う。もちろん今でもその切抜きは大切に持っている。(この思い入れ深い「翼のない鳥」は、ヘルスワーク協会刊「樹村みのり作品集［子供編］悪い子」に収録) 初の単行本化は１９７５年と遅かったが、デビューしたのは１９６４年。デビュー前の中学二年のときに雑誌社に持ち込んだという二作品が、ナチス・ドイツの支配下にあったボーランドを舞台としたものと、アメリカでの黒人差別を扱ったものだというからオドロキだ。どちらも描き直されて後に発表されているが、社会派問題作を描き続ける作者らしい、デビュー前のエピソードだ。 それにしても、たまたまもらった月刊雑誌「別冊少女コミック」に樹村作品が載っており、それも最も好きな作品となった「翼のない鳥」だったというのは、偶然とは言え、出合いとは不思議なものです。こんな出合い、発見がどこにあるのかわからないから、本読みの旅はやめられません。 |
樹村みのり作品ファンが開設の、とってもありがたい情報満載のサイト
パンダホームページ
ＩＦＦの出版部である「ヘルスワーク協会」
ＩＦＦ
「樹村みのり作品集［子供編］悪い子」のページ (店主の大のお気に入り「翼のない鳥」を収録)
最寄の本屋さんに注文しての取り寄せも可能ですので、樹村みのりの作品に興味を持った方は是非ご一読を
三原順作品刊行を求める会が発売中の「みのりすと」は下記サイトに通販の案内があります
樹村みのりファンによる、樹村みのりファンのための本「みのりすと」は、詳細な作品データなど樹村作品ファン必携の内容です
上記の「パンダホームページ」さんからお声がかかり、私も「翼のない鳥」について一文をかかせていただきました
「笹生那実」のファンページ
樹村みのりさんの８作品集が復刊ドットコムで投票受付中
復刊ドットコムの『樹村みのり』特集ページ