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(2002年11月1日付け道新夕刊) 漫壇 再版待ってます 第2回目
「漫画家残酷物語」永島慎二作 生きるとことへの応援歌 |
今回取り上げるのは、一九六一〜六四年に、貸本屋向け劇画雑誌で連載された作品だ。全二十八話からなり、漫画の魅力にとりつかれた者たちのさまざまな人生を、切々と描いていく。そのうち、筆者が最もひかれる「嘔吐(おうと)」は、こんな筋だ。 主人公の秋葉は、そこそこの人気漫画家だが、ある日、自分の作品を読み返し、思わず吐き気を催してしまう。そこで、ほんとうの自分の漫画を描くため妻と離婚し、アルバイトをしながら三年間かけ作品を仕上げる。 が、出版社から相手にされず、秋葉は、原稿をビルの屋上からばらまき、そして誤って転落して重体に。その原稿は、作者不詳のまま発売されベストセラーになる。一方、ホームレスとなった秋葉は、本になった自作をたまたま見かけるが、力尽きたのか、喀血(かっけつ)し涙を流しながら死んでいく。 これらの作品に私が出合ったのは、三十年前の学生時代。人生について、漠然とした不安感にとらわれていたときだ。現状に嘔吐し、必死に再生を目指した秋葉のように、一度っきりの人生、自分の気持ちに正直に生きたいものだ、と強く感じたことを思い出す。私が最も繰り返し読んできた愛読書であり、この作品から生きる勇気を少しもらったような気もする。 さらに私事に及ぶが、私の経営する貸本屋は経営難が続き、この十月、ついに限界に達して廃業とあいなった。そして、インターネット古書店へと営業形態を変えた。そんな折り、この作品を久々に読み返して、本作は生きるということへの応援歌だとの感慨を深くしたことを付け加えておきたい。 さて、本作は、朝日ソノラマの新書版全三巻を最初に、同書の未収録作品も含めた同社の全一巻版、さらにその新装版などとして、原題のまま四回、単行本として刊行されている。 青春モノの古典と言われる本作はもちろん、若者たちの真摯(しんし)さを描いた多くの永島作品こそ、読み継いで欲しい名作なのだが、今、そのほとんど全てが品切れ・絶版というのは、かえすがえすも惜しい。 なお本作は、インターネットの課金サイト「10デイズブック」 (http://www.10daysbook.com/)で読むことができる。 (ネット古書店「夢の屋」店主) |
(コラムには字数制限があるので、もうちょっと) 実は「漫画家残酷物語」には、高校時代にクラスメートに借りて一度読んでいる。その当時、少年もの週刊誌では何か飽き足らなくって、青年向けの月刊ビッグコミック、漫画アクション、ヤングコミックなどを買っていたのだが、「漫画家残酷物語」では何も読後感が残らなかった。まだまだ精神的に子供過ぎて、生きることについて格別悩んだこともない時期だったから、何も喚起されるものもなく、作品そのものを理解できなかったのだと思う。 その後、浪人し、失恋もし、五月病で留年もして、再度この作品に出合ったとき、これらの作品世界は心に染みわたってきました。マンガの持つ表現力の豊かさを思い知らされ作品であり、ずっと永島慎二の作品を追いかける起因となった作品だ。 永島慎二については、その作品を紹介したファンサイトがないことから、この俺が…と着手し、少しずつ表ソフトに打ち込んでいたのだが、パソコンが壊れたときに全て消え去ってしまったので、断念してしまった。 貸本屋時代の会員の友達が個人的に永島さんと面識があるとのことで、そのツテでサイン本、テレビアニメのための絵コンテ、版画などを入手できた。 特に、山頭火を題材とした版画(「うしろすがたのしぐれてゆくか」を詠んだもの)は気に入っており、店の私の頭の上にずっと飾ってあります。 「漫画家残酷物語」を含め永島作品については、少しプレミアムはついているものの、ネットを使う限り入手の難しい本は少ない方なので、未読の方は是非入手して読んでいただきたい。 本コラムが掲載された11/1の午後7時半に、親父危篤の電話連絡が入り、この日が命日となったのも何かの縁か。 |
復刊ドットコムでは、永島慎二作品の復刊投票を受付中です。
『永島慎二 』特集ページ
上記の復刊ドットコムには、何故か「漫画家残酷物語」の投票が無かったので、私がまず一票を投じました。
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