道新マンガコラム 「シリーズ・春と夏と秋と冬」ささやななえ

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(2002年9月6日付け道新夕刊) 漫壇 北の名作 第12回目
「シリーズ・春と夏と秋と冬」ささやななえ作   炭鉱町の青春 淡々と
 かつて道内に多数あった炭鉱の街。そのうちの一つである芦別に育った作者が、故郷を舞台のモデルにして描いた青春ドラマが本作だ。
 全六話からなるこのシリーズは、中学三年の主人公・村田陽が姉と弟と、炭鉱町のバス停に降り立ったところから物語が始まる。父親が蒸発し母親も亡くした三人は横浜で暮らしていたが、なんと炭鉱で働いていた父から連絡が入り、父のいるこの町に引っ越してきたのだ。
 姉に頭の上がらぬ陽。その姉から「(父を)許してやろうよ」と言われても、素直になれず、父を避けてしまいがちだ。一方、父もオドオドした態度をとり、それが陽を一層いらつかせる。陽は長髪禁止の校則に従わずに髪を伸ばしたままで、学校ではつっぱって見える存在でもある。
 進学問題、同級生とのケンカ、淡い恋心…。秋に始まった物語は、石炭ストーブのある炭鉱住宅の様子、三交代の勤務に合わせて鳴るサイレンなど、炭鉱町の情景を盛り込みながら、雪の降り積む冬を経て、ふきのとうの芽吹く春を迎えて終わる。
 その間、特に大きな事件も出来事も起きない。淡々と描かれていくのは、主人公の日常生活と心情だ。自分自身を含め、すべてに対するいら立ち―。思春期の少年の心の揺れがひしひしと伝わり、若い読者はもとより、かつて少年少女だったすべての読者の共感を呼ぶ。
 物語を締めくくるのは陽のモノローグだ。
 「くりかえされていく おれの中の季節」
 「いろんな問題をかかえたままさ」
 「ああ気の遠くなるような話だぜ」
 「なァ?」
 本作を収録した単行本は残念ながら絶版。作者の最近の問題作として、児童虐待を描いた「凍りついた瞳」(原作・椎名篤子、集英社刊)がある。なお、作者は改名し、現在は「ささやななえこ」と名乗る。
             (マンガ専門貸本店「夢の屋」店主)

(コラムには字数制限があるので、もうちょっと)
 小生、今年五十になりましたが、いまだに青春のしっぽを引きずり続けているようで、若いときにハマった作品も含め、青春ものがわりと好きです。
 年をとったので、悟ったようなポーズ(諦念か)だけはうまくなりましたが、その実態は二十代のころとそんなには変わっていないなという気がしています。精神的に成長しきれていないのかもしれません。
 本作は、主人公の自問自答、モノローグのシーンが多い。自問自答を繰り返すが答えは出ず、なかなか思ったとおりに行動にも表せない。また、自分は他人とちょっと違うのかもと意識しながら、他人も自分と似たような存在なんだと気づいていく。
 本作が収録されている単行本は私も持っておらず、所持しているのは、「樹村みのり・ささやななえの世界 PART2」という題名の総集編の季刊雑誌「プチコミック」(小学館、1979.1/1)です。何故に小学館からではなく、講談社の作品集に初収録されたのかは不明です。
 実は、今月の1日にハードディスクにキズがついたのかパソコンが壊れてしまい、全てのデータが消え去りました。ですから、本作関連のメモが何も残っていないため、予定になかったものまで本欄に書くことになったようです。
 前述の雑誌の作者コメントによると、これは第一部ですとありましたけど、第二部は書かれていないような模様です。第二部の情報をお持ちの方は教えてください。
 今度コラムのテーマが変わりましたら、大好きな樹村みのり作品を取り上げたいと思っています。

「ささやななえ自選集 2」(講談社、KCデラックス、1997.6.13)絶版

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