道新マンガコラム 「がんばるな!!!家康」魚戸おさむ

道新コラムのトップ   貸本屋について   TOP
人気ランキング マンガ家別人気マンガランキング  店主オススメ
レンタルのシステム

(2002年4月12日付け道新夕刊) 漫壇 北の名作 第7回目
「がんばるな!!!家康」魚戸おさむ作 方言強烈 人情営業マン
 人生の大事というのは、進学、就職、結婚などいろい ろあるけれど、家の新築・購入というのも、家族の終(つい)の すみかを決める意味で、迷いが交錯する一大事だろう (一生賃貸で終わる私には実感すべくもないが)。それ ゆえ家づくりには、人それぞれの思いがあるだけ、悲喜 こもごものドラマが生まれることになる。函館生まれ、 札幌育ちの作者が描いた本作は、そんな「家と家族」に まつわる人情ドラマ。主人公は北海道弁のがんばり屋 で、笑いもたっぷりだ。
 海と坂の街・小樽市の住宅販売会社に勤務していた主 人公・北辺(きたべ)家康は、旅の女性に恋心を抱き、 もらった一本の電話から会社を退職して、彼女の住む横 浜までやって来てしまう。そこで同業の営業マン・舟木 と知り合い、彼の会社に入社する。お客の理想の家を実 現させたいと真剣に考えるため、設計の変更などもたび たびという、現場泣かせの営業マン・家康の誕生だ。
 舟木とドタバタコンビを組む家康は、人に感情移入し やすくて涙もろい。そして客には徹底的に親身だ。行き ずりの他人の問題にも目いっぱいかかわってしまうお人 よしの主人公には、映画「男はつらいよ」の寅さんに通 じる味もある。世の中、家康のような住宅マンばかりだ と、欠陥住宅などという問題も起きないのだろう。
 家康のトレードマークはニコニコ笑顔だが、もう一つ の個性が強烈な北海道弁。「いがったー」「したっけ」 「がんばるしかないっしょや」。本作にはそんな北海道 弁がちりばめられており、普通のせりふからも道産子独 特のイントネーションが聞こえてくるようだ。
 先日、ネットで知り合った大阪の人と初めて会う機会 があった。電子メールなどの書き言葉は標準語だが、話 すときはよく大阪弁になるとのことだった。人は方言で しゃべるときの方が、気取りなく本音で話しているに違 いない。地方のなまりを聞いて心が安らぐ気がするの は、そのためだろう。
 北辺家康の故郷である北海道の経済状況は厳しい。当 店も例にもれず、今や先の見えない「わや」な経営状況 にある。けれども道産子としては、家康のように「なん もさ」精神で、何とか踏ん張って切り抜けたいものだ。
             (マンガ専門貸本店「夢の屋」店主)

(コラムには字数制限があるので、もうちょっと)
 魚戸おさむと言えば、TVドラマ化もされた、家庭裁判所が舞台の人情ドラマ「家栽の人」(原作・毛利甚八)が、貸本として今でも人気がある。訊くところによると、魚戸おさむさんは、SFマンガ家H氏のアシスタントをしていたらしい。SFマンガ家のということで、ちょっと意外な気がした。
 北海道弁でちょっと補足を。「わや」は「ひどい、大変悪い」の意、「なんもさ」は「なんということはないよ」という意で、私が使ったケースでは、悪い事態を前向きにとらえて自分を叱咤激励する言葉かな。何かお礼を言われたときに、「なんもさ」「なんもだ」と応えるときは、「どういたしまして、別に大したことでないから気にしないで」の意かな。イントネーションは別にして普段は私も標準語で会話をしており、とっさに北海道弁が出ることはあるけれども、身体に染みついていてあらためてその意味を考える必要のないものが方言なのだろう。
 コラムで話題にした大阪の人は、ネット古本屋のお客さんだが、訊いてみたら、書き言葉が標準語になっているのは、学校教育の影響が大かなと言っていました。ネットの掲示板に書き込むときは標準語なのもので、実際に会ったときは大阪の人だったのとビックリされるとも。(TESさん、出張でもないのに、わざわざ来札いただき、お疲れさまでした)
 方言といえば、ツジモトさんも言葉に詰まり歯切れの良くないときは、標準語になってましたね。標準語のときは、何かうさんくさい印象がありました。

「がんばるな!!!家康」第1〜7巻(小学館)ビッグコミックス(B6判)雑誌連載は先日終了

道新コラムのトップ   貸本屋について   TOP
人気ランキング マンガ家別人気マンガランキング  店主オススメ
レンタルのシステム

inserted by FC2 system