道新マンガコラム 「妖精王」山岸凉子

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(2002年3月15日付け道新夕刊) 漫壇 北の名作 第6回目
「妖精王」山岸凉子  色あせぬ幻想と冒険
 本作を最初に読んだのは、ずっと昔、姉の家に泊まり、姪(めい)の本を借りた時だったと思う。何たって、SFなど一部を除くと、私の少女マンガの師は姪だから。
 さて、物語は、主人公・忍海爵(おしぬみ・じゃっく)が肺結核の療養のため東京の高校を休学し、道内にある親せきの牧場にやってきたところから始まる。爵は、またいとこの風野燐(ふうのりん)から、象牙の角笛のペンダントを贈られ、妖精たちが住む世界・ニンフィディアへ踏み込む。
 そこでは、闇と光とに属する妖精たちが対立。闇の女王は人間世界をも支配しようと企て、その兆候は地震の多発や気候変動として、人間世界の北海道にも現れている。これを知った爵は、女王の陰謀を阻止するため、その鍵となる失った言葉≠ナできた指輪を取り戻しに魔州湖≠ヨ旅立つ。
 爵は旅の途中でいろいろな仲間に出会い、また、妖精王の証である角笛を奪おうとする怪物たちと戦いながら、仲間とともに少しずつ精神的にたくましくなっていく。
 物語は複雑に入り組み、神秘的な霧の摩周湖や噴火する有珠山など、人間世界と妖精世界とが奇妙にリンクしつつ進展していく。そして、主人公を巻き込む原因となった百年前の事件の謎がクライマックスで氷解して、心地よいラストをむかえる。
 登場するのは、世界中の神話や伝説のキャラクターたち。カタカナ表記の名前ばかりなのだが、コロポックル伝説もある道内が舞台だからか、道産子読者は違和感を覚えないのでは。
 人間心理の描写を含め「妖(あや)しい」という言葉がよく似合う山岸凉子。本作は、彼女が二十年以上も前に描いた作品だが、今はやりの映画やゲームにも通じ、冒険ファンタジー物語として色あせることがない。
 さて、物語のキーワードとなる失った言葉≠ニは何なのか─。それを考えながら、爵と一緒に妖しい世界への冒険旅行に出てみませんか。
 よく知られているように、山岸は空知管内上砂川町出身。近作には、かつて暮らした札幌などを舞台に、戦災孤児の少女と異能を持った男とのかかわりを描いた「白眼子」もある。
             (マンガ専門貸本店「夢の屋」店主)

(コラムには字数制限があるので、もうちょっと)
 又従兄弟の風野燐は妖精の世界ではクーフリンという名で登場して、闇の女王・マブのたくらみを主人公に教え諭し、主人公の最も信頼する人物となる。
 主人公・爵は肺結核を患っており、人間世界では虚弱体質ということになるのだが、妖精世界では、精神的な成長がそこでの強さに反映されることになるため、物語の進展とともに主人公の力もだんだん増していく。
 山岸凉子といえば、厩戸王子(聖徳太子)を異能力者として描いた「日出処の天子」が真っ先に浮かぶが、当店で貸本として一番人気がある山岸作品は、やはりこの「日出処の天子」だ。

「妖精王」全3巻(白泉社文庫、白泉社)
「妖精王」全5巻(花とゆめコミックス、新書判、白泉社)絶版
「白眼子」全1巻(希望コミックス、B6判、潮出版)

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