道新マンガコラム

シュマリ手塚治虫

道新コラムのトップ   貸本屋について   TOP
人気ランキング マンガ家別人気マンガランキング  店主オススメ
レンタルのシステム

今回から、担当の記者が赤木国香さんから田中秀実さんにバトンタッチされた。
(2001年12月14日付け道新夕刊) 漫壇 北の名作 第3回目
シュマリ手塚治虫作  「野生児」通じ描く開拓期
 手塚治虫には、昭和新山の観測、保護に生涯をかけた故三松正夫を描いた「火の山」、「ブラック・ジャック」の一話「一ぴきだけの丘」など、北海道を描いた作品がいくつかある。そのなかで、まだ原野だったころの北海道を舞台にした作品が「シュマリ」だ。

 箱館戦争が終結し、蝦夷地が北海道と改称された明治2年(1869年)に物語は始まる。元旗本の野生児・シュマリ(キツネという意味で、アイヌ民族の長老が名付け親)は、妻・妙と駆け落ちした大月を捜しに北海道へ渡ってきたのだが、人違いで別の男を殺してしまい、お尋ね者となっている。シュマリの右手は包帯が巻かれてふところに入れられているが、ひとたびその封印を解くと人をばったばったと殺すことになる。

 大雨の降る余市川のほとりでやっと二人を見つけた シュマリだったが、開墾した畑を洪水から守ろうとした大月は水に飲み込まれ死んでしまう。その地に留まるという妙を置いて札幌にやって来たシュマリは、官憲に捕まるが、榎本武揚が隠した五稜郭の軍用金を探し出すことを条件に釈放されることに…。

 物語は、シュマリの妙に対する断ち切れない思いを軸に、北海道の自然と格闘しながらの開墾や牧場づくり、シュマリの見つけた隠し軍用金をめぐる思惑、石炭でエゾ共和国をつくろうという太財一族の野望、和人のためにだんだん住む土地がなくなっていくアイヌ民族、藩閥にからむ政争などを織り込みながら展開していく。

 登場人物も、シュマリの所に転がり込んできた大酒飲みの孤児ポン・ション、シュマリを相棒にしたい野心家・太財弥七、性格は正反対だが顔は妙にそっくりの太財峯、人斬り十兵衛こと土方歳三などと多彩だ。

 オオカミやクマなどの野生動物、冬の寒さ、川の氾濫(はんらん)など、雄大だが厳しい北海道の自然を舞台にしたアクション満載の日本版「西部劇」になっている。

 作者はこの作品を描く前にサイン会でたった一度北海道へ来ただけだというから、天才の想像力というのはすごいものだ。今は失われつつある、荒々しい北海道の自然。本作で、かつての姿に思いをはせてみることをおすすめしたい。

(コラムには字数制限があるので、もうちょっと)
 この人なかりせば日本のマンガは今と違うものになっていたであろうほど影響を与え続けている手塚氏の作品を取り上げるというのは、おそれ多いことです、ホント。
 ただ疑問なのは、オオカミの群れが人を襲うシーンが数カ所あるのことだ。エゾオオカミというのは本当に人を襲ったのだろうか?家畜を襲っただろうけど。
 本物のオオカミを見たことはないけれど、テレビのドキュメンタリーや小説に登場するオオカミの生き方には大いに魅力を感じ畏敬の念さえおぼえているもので。
 北海道新聞(2001.8/15社説「オオカミって悪者なの?」)で、日本オオカミ協会(こういうのがあったんですね)のことと標茶町にあるという生きたオオカミをじかに観察できる施設(記事の時点では各種のオオカミが20頭)のことが取り上げられていた。一度生きたオオカミを観てみたいものだ。
  日本オオカミ協会
 「シュマリ」に戻って、物語では全てを食い尽くすかのようなイナゴの大群と野ネズミの大群も描かれている。かつての北海道には動物パニック映画のようなこんなシーンがあったのだろうか。
 本作が最初に単行本化されたのは文庫判だったが、それには連載時の扉絵が収録されていて、扉絵だけを見るとアニメの連続コマ絵のように、少しずつ動いて遠ざかっていく馬に跨ったシュマリが描かれていたはずだ。(現物が手元にないので確認できず)

「シュマリ」全4巻(手塚治虫漫画全集、B6判、講談社)
「火の山」(同上)
「一ぴきだけの丘」は「ブラック・ジャック」(少年チャンピオン・コミックス、新書判、秋田書店)の第15巻に収録

道新コラムのトップ   貸本屋について   TOP
人気ランキング マンガ家別人気マンガランキング  店主オススメ
レンタルのシステム
inserted by FC2 system