道新マンガコラム

北の土龍(もぐら)石川サブロウ

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(2001年11月9日付け道新夕刊) 漫壇 北の名作 第2回目
北の土龍(もぐら)石川サブロウ  絵かきの青春を温かく
 高校の美術の授業以来、絵を描くこととは全く縁がないけれど、絵を仕事とするマンガ家が「画家の世界」をどう描くかには興味がある。しかし、絵画・画家を扱ったマンガというのは相当な表現力が要求されるためか意外と少なく、やっと出合ったのが本作だった。
 人並みはずれた人見知りで、同僚とのつきあいもほとんどできない二十歳の堂本繁は、札幌で印刷工をしながら絵の勉強をしている。自分の意気地無さゆえ同僚の女性に失恋してしまった繁は、生まれ変わるつもりで百号の大作に挑み公募展に初めて出品し、審査員特別賞を受賞する。だが、上司から「たかが絵」とけなされ、会社を辞めてしまう。アルバイトをしながら絵かき人生をスタートさせるが、絵で生活できるまでの道は遠く創作の悩みも尽きない。
 ライバル青野とその恋人・緋鶴との出会いと別れ、芸大四浪中の絵仲間・村上の挫折など、これは絵描きの青春ドラマだ。クライマックスは負けた方が筆を折るという日本武道館での世界中の画商によるオークション対決。この対決はなんとテレビで世界中に衛星中継、というマンガらしい展開もある。
 物語は札幌に始まり妻子と暮らす天売島で終わるが、絵のテーマやモチーフを探す繁の旅先として、道内各地の風景もふんだんに描かれており、使われている北海道弁も多い。最終巻のスタッフ名には後志管内寿都町出身のマンガ家・本庄敬の名前もあり、オークション対決の相手も元漁師で同町出身という設定だ。
 石川作品は、どれも独特の温かみと優しさがあるのが魅力だ。本作でそれが一番現れているのが、作品の中で登場人物たちが描く一枚一枚の絵画。残念ながら白黒だけれども、何かしらホッとした感覚で包んでくれる。作者の生まれ育った北海道の恵みの元である土と潮と太陽のにおいと温かみが<希望>とともに込められている。
 全二十一巻の本作は絶版(品切れ、再販予定なし)だが、この後にも画家を主人公にした「蒼き炎」を描き、今また女性画家がヒロインの「ゆきのいろ」を連載中だ。彼女の成長ぶりをどんなふうに見せてくれるのか展開を楽しみにしている。
              (マンガ専門貸本店「夢の屋」店主)

(コラムには字数制限があるので、もうちょっと)
 前々回取り上げた一ノ関圭の作品群を読んで以来、「画家の世界」を描いた作品を探すようになったけれど、実在の画家を扱ったものを除くとホント少ない。この二人以外では、山田貴敏の作品しか記憶に残っていない。
 ちなみに、天売島で新たなる旅立ちの決意を込めて繁が描いた絵は、空には無数のカモメが、海では多数の船が沖へ向かい、手前の岩壁には海鳥の親子という豊漁を予感させる希望に満ちたものだ。

「北の土龍(もぐら)」全21巻(ヤングジャンプC、新書判、集英社)絶版
「蒼き炎」全12巻(ヤングジャンプC、B6判、集英社)何っ、これも絶版?
「ゆきのいろ」第1巻(ジャンプコミックスデラックス、B6判、集英社)スーパージャンプ連載中
一ノ関圭については→「らんぷの下」一ノ関圭
山田貴敏「マッシュ」全11巻(少年サンデーC、新書判、小学館)もちろんというのもオカシイけど絶版

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