貸本(レンタル・コミック)についてわかった2,3の事柄 貸本屋さんは昔からずうっと庶民の見方なんだ 「貸本屋」さんをご存じですか?いまのレンタルビデオの先輩格というか、有料の図書館っていう感じのところです。最近めっきり見かけなくなりましたが。 筆者が小学生の頃、昭和40年代はじめにはまだ近所に数件あって、マンガから小説、雑誌まで揃えていました。筆者は自分の小遣いでは買えない手塚治虫や石森章太郎の高価な大判本を借りていました(年齢がバレますね)。読み代は1冊10円から、高くても50円くらい。本を返したら返金される保証金が確か500円でした。当時筆者にとって500円は大金だったので、あの頃お札だった500円を手のひらの中に折って大事に握りしめ、10円玉何枚かをズボンのポケットに入れて、貸本屋さんに通った記憶があります。 当時の貸本屋さんの面影が唯一残っているのは「沖本貸本店」(中央区南1西24)です。店主の沖本さんのお話では、最盛期札幌市内には百数十店の貸本屋さんがあったそうです。現在のレンタルビデオ店は札幌市内に187店(NTTタウンページ調べ)ですから、貸本屋さんも同じくらいあったという感じですね。 現在は、NTTタウンページの「貸本」分類に出てくる営業中のお店は札幌全市で7店しかありません。しかし、悲しむのはまだ早い!今回何店か取材して、貸本屋さんが昔と同様に、現在もホットに営業していることがわかりました。 新刊マンガ単行本も1冊100円前後で読める。このメリットは大きい それはまず第一に、それぞれのお店が読み代(貸出し料金)を安く据え置いていること。新刊本の仕入れや関連情報の収集など新鮮な情報発信に努めている。利用者の便宜を考えた工夫を凝らしていることが挙げられます。 例えば読み代。新刊・旧刊関係なく少年少女コミック(新書判サイズ)で1冊50円から80円。B6判と大きな青年・レディースものでも100円前後というのが相場のようです。借りられる期間は、最短でも2泊3日。冊数に応じて貸出し期間が延長されるシステムが普通です。レンタルビデオの場合、最新ソフト1本が1泊2日300円はしますから、貸本屋さんも料金ではかなりガンバッテいるようです。 そして情報発信。「夢の屋」のようにホームページを立ち上げて、リストアップしたマンガ古書のオンライン・オークションを開催したり、TVドラマ化される原作がひと目で分かる情報コーナーを作ったり、マンガに精通した店主の情熱が伝わってきます。 工夫の面では、「マンガレンタル11」にある閉店後でも返却できるポスト。深夜でも延滞にならずに済むので、利用者にはありがたい設備だと思います。 また最近では、これらの貸本専業店以外にもレンタルビデオ屋さんの中でレンタルコミックを置いているお店も増えてきているようです。 日本が世界に誇るマンガの世界。きっといままで知らなかった面白い作品があります。どんどん借りて読みましょう。 (夢の屋店主注:写真つきで三店の店舗・店内が紹介されていますが、住所、電話番号、営業時間、写真と写真のコメントは省略) 『夢の屋』(北区)ちょっと“濃い”感じのする面構えだが、中はいたってフレンドリー。在庫3万冊。新刊もどんどん入り、話題作は2セット用意する場合もあるという。いろんなリストやランキングも見ていて楽しい。店主・辻岡さんはジャンルを問わずマンガに詳しい人なので、わからないことがあったら、どんどん質問しよう
『マンガレンタル11(イレブン)』(白石区)お店はJR白石駅に面していて分かりやすい場所にある。在庫4万冊は、今回取材した中では最大。その理由は、毎月100数十冊もの新刊を仕入れているためらしい。千円以上借りるともらえるシールを20枚ためると、千円分の本が無料で借りられる会員サービス制度有り。貸出し基本単位は2泊3日と若干短めなのだが、10冊以上では7泊8日もOKだ。 ■店主のオススメ(夢の屋店主注:本の表紙の画像は省略) 創業10年目「夢の屋」の店主、辻岡さんの現在のお薦め作品は、倉科遼:作、和気一作:画の「女帝」。「大人が楽しめる本ですね。男性、女性に関わらず人気です」。確かに読んだ筆者も筆者の嫁さんもすっかりハマッタ。 『女帝』現15巻 主人公はネオン街に生きる女「彩花(あやこ)」。物語は、愛と悲しみ、喜びと苦しみ、信頼と裏切りといったさまざまな葛藤・試練を経ながら、主人公が「女帝」と呼ばれていく様を描いた一種のサクセスストーリー。展開が自然で、物語に違和感なく浸れる。日本人の顔を美しく描き分ける、誇張の少ない画も秀逸。(エッチ描写もけっこうリアル) ■そのほかの最近の人気作品(夢の屋店主注:本の表紙の画像は省略) 「夢の屋」さんのホームページ(夢の屋店主注:HPの画像は省略) ホームページは貸本申込み用として始めたそうだが、現在ではむしろ店主の秘蔵本を中心としたマンガ古書の販売コーナーが人気だ。定額本(値段を決めてあるもの)とオークション(高い入札価格を出した人が落札するもの)の2タイプ。画面からも推察できるように、コレクター垂涎の本が多数登場する。全国各地から入札があるそうだ。また、各種マンガリストや関連リンク集など情報も豊富。検索エンジンYahoo!(ヤフー)で検索キーワード欄に「夢の屋」と打ち込めばすぐ分かる。 (夢の屋店主注:「水滸伝」見開き画像は省略) 取材中、コミック・ハウスさんで横山光輝「水滸伝」全8巻を発見。読みたくて全巻いっぺんに借りた。8冊だと4泊5日借りることができ、少年コミック版のため、料金は最低の1冊50円。@50×8冊しめて400円の安さ。ビールとポテチの方が高くついたくらいだ。それから4晩、梁山泊(りょうざんぱく)に集った108人の豪傑の活躍に酔った。 【そのほかの札幌市内の貸本屋さん】※NTTタウンページ調べ (夢の屋店主注:住所、電話番号、営業時間は省略) コミック・シノロ(北区) こみっく6・6(北区) 2分の1ブックハウス(西区) マンガ道場(東区) 研究者 箱崎岩男 今回の取材を通じて、ふたたびマンガ読みの楽しさを思いだした 今回の評価 老舗「沖本貸本店」には先生もむかしお世話になりました。聞くところでは近年、客を装った泥棒に手塚治虫の初期の作品を盗まれるというひどいこともあったようですね。でもなんとかこれからもお店を続けてください(今回は評価になってないな) |