(2000年12月22日付け道新夕刊)第8回目
漫壇 ただ今貸出中
「シャカリキ!」曽田正人作
汗と涙 目離せぬ熱き戦い 今年はオリンピックとコンサドーレに熱くさせられた一年であった。メダルと自己記録更新を目指しての、またはJ1昇格を目指しての選手たちの熱い戦いは、私のようなスポーツとは縁のないテレビ観客をも魅了してくれた。 今回はそんなスポーツの熱さを呼び起こしてくれるマンガを取り上げる。本作は近年のスポーツものでは傑出した面白さで、オススメしたお客さんもハマっている。 主人公の野々村輝(テル)は小学二年生の時、父の転勤で関西の坂の多い町に引っ越してきた。到着早々自転車で街に飛び出したテルは、坂を登る魅力にすっかり取りつかれてしまう。汗と涙と鼻水まみれでペダルを踏みながらヨレヨレと登る苦もんのテル。これが思わず「行けっ!」と声をかけたくなる「坂バカ」テルだ。 「坂やったら誰にも負けへん」と思っていた中学三年の時、横浜の同学年・由多が突然現れ、テルは一番好きな坂で追い抜かれてしまう。ライバルの出現だった。テルは由多と勝負するため由多と同じ横浜の高校に入学し、自転車部に入部。そしてロードレース大会への初参加で、テルは真っ先に山頂を通過した者に贈られる「山岳賞」を取るが、結果は由多に続く第四位だった…。次のレースはどうなるのだと気になったら、あなたも「シャカリキ!」世界の住人。一気に全十八巻だ。 作者・曽田は、この作品の後、レスキュー隊員を描いた「め組の大吾」で小学館漫画賞を受賞し、現在は青年誌にバレエを扱った「昴(スバル)」を連載中だが、どの主人公もちょっと屈折している点に魅力があり、目の離せないマンガ家の一人だ。 さあ、あなたもテルと一緒にタイヤのきしみと風を感じてみませんか。真冬のシバレた日に燃えたくなったら、断然「シャカリキ!」だ。 さて真冬の冷たい風は、わが「夢の屋」にも吹きつけている。正月に始めたネット通販の収入で今年も何とか年を越せそうだが、来年はいったいどうなることやら…。 (マンガ専門貸本店「夢の屋」店主) |