道新マンガコラム

寄生獣岩明 均作

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(2000年8月18日付け道新夕刊)第4回目 漫壇 ただ今貸出中
寄生獣岩明 均作   客の支持集めたSF傑作

 最近は人気が集中する「これは!」というヒット作品がなく、貸本屋稼業としては寂しい限りである。以前は、同じ巻の新刊を三冊購入しなければお客さんの要望にこたえられないほどの人気作もあったのだが。
 そんな人気作の代表格が「寄生獣」(講談社、全十巻)だった。一九九七年末にわが店で行った通算人気順位でも第二位に入った(ちなみに一位は池上遼一作「サンクチュアリ」)。連載されていたのが月刊誌だったため、続巻の発売は半年に一度だったが、これは十分待たされがいのある作品であった。お客さんと続巻が出る度に「完結したのを一気に読みたいねぇ」と語り合ったものだ。お客さんに薦める時も「続巻は半年に一冊ですからね」と念を押していた。
 ある夜、寄生生物の種子が宇宙から舞い降りてきて、人間たちの中に入り込み、肉体と精神を乗っ取ってしまうところから、物語は始まる。
 高い知能に変形能力を持ち、かつ人間をえさとする寄生獣の誕生である。
 主人公の高校生・新一は寄生生物の種子が右手に入り込む途中で異変に気付き、腕をきつく縛ったため、それが右手でふ化してしまう。こうして新一は右手のみの寄生獣「ミギー」と奇妙な共生をするはめになる。
 しかし、人間の意識が残っている新一は、寄生獣たちから危険な存在と見なされて狙われることとなる。さて、新一とミギーの運命や如何に。
 この作品の魅力は、先の読めぬストーリー展開はもちろんだが、寄生獣たちが変形するシーンのグロテスクなまでのリアルな描写と「われわれはなぜ生まれてきたのか」などと寄生獣たちが哲学するところにあると思う。だれか、この作品の映画化企画をハリウッドに持ち込んでくれないだろうか、などと思わせる、SFマンガの傑作だ。
 お客さんから、「何か面白いものない?」と尋ねられると、「なんと漠然とした問いか」と困りつつも、いつも「寄生獣」を挙げてきた。完結して五年たった今でもお薦めした方からは大いに喜ばれている。
 さあ、あなたも「寄生獣」と一緒に哲学してみませんか。
                    (マンガ専門貸本店「夢の屋」店主)

「寄生獣」(講談社) アフターヌーンKC(B6判)全10

quimitoの本箱さんにも、岩明均作「寄生獣」についての感想ページがあります。

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