道新マンガコラム

富江伊藤潤二作

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(2001年2月16日付け道新夕刊)第10回目 漫壇 ただ今貸出中
富江伊藤潤二作   人気の「楳図の後継者」
 恐怖・怪奇マンガと言えば、マンガファンならだれしもまず楳図かずおを思い浮かべるだろう。当店でもこの分野で一番人気があるのは楳図だが、彼の後継者と言えるマンガ家がなかなか現れないという不満・いらだちをずうっと抱いてきた。そんな時に、マンガ情報誌に掲載された伊藤作品のワンカットに出会い、それ以来ファンになってしまった。そのデビュー作品が、雑誌「月刊ハロウィン」が募集した『楳図賞』の第一回佳作に入選した「富江」だ。そして、その後もシリーズ作品として続編が多数描かれている。
 物語は女子高生・川上富江の葬式から始まる。富江はバラバラ殺人事件の被害者で、まだ死体の全部は見つかっておらず、犯人も捕まっていない。葬式の翌日、教室で担任が生徒たちになぐさめの言葉をかけているとき、「すみません遅れて」とドアを開けて入ってきたのが死んだはずの富江だった。これが殺され、切断されてもそれぞれが再生し、回りの者の運命を狂わせずにはおかない邪悪で妖(あや)しい美少女・富江の誕生であり、際限なく続く悪夢の始まりだった。
 この富江という名前が歌「お富さん」からきているというから、作者はユーモアセンスもたっぷり持っている。恐怖ものとギャグものの両方を描いている楳図に通じるものがあり、思わず笑ってしまう奇妙な味≠フ作品も多い。奇抜なアイデアとおぞましい画で次から次へと読者を痺(しび)れさせてくれる作者の頭の中は一体どうなっているのだろう。
 この「富江」シリーズと後に男性誌で初連載された「うずまき」はそれぞれ同題で映画化されているが、それだけ魅せられたファンが多いのだろう。たまに女性から怖いマンガで何かないかと尋ねられるが、その時は真っ先に富江シリーズをオススメしている。
 女性向けの恐怖マンガだと敬遠している男性も、SFファンの方も、何が起こるのか予測のつかない潤二の不気味な世界をのぞいてみませんか。怖いものの季節と言えば夏だけど、外が厳寒の時に、十分暖まった部屋で読むホラーマンガもまたオツだ。くらくらするような恐さの保証書付き。
                  (マンガ専門貸本店「夢の屋」店主)
「富江」(朝日ソノラマ) 伊藤潤二 恐怖マンガCollection(B6判)Part2まで
「うずまき」」(小学館) スピリッツ恐怖コミック(A5判)全3(全1冊ものも出ているはず)

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